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最高裁判所第三小法廷 昭和61年(行ツ)115号 判決 1992年7月14日

上告人 三輪田元也

被上告人 渋谷税務署長

代理人 下田隆夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山本剛嗣の上告理由について

一  原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。(1) 上告人は、昭和四六年四月一六日、上田フサノから、自己の居住の用に供するために、東京都世田谷区上馬五丁目三〇番四所在宅地四七二・六二平方メートル(以下「本件土地」という。)及び同土地上の鉄筋コンクリート造陸屋根地階付き二階建家屋一九五・八一平方メートル(以下「本件建物」という。)を、一括して代金五一〇九万八一二五円で買い受けて取得し、その後、同年六月六日にこれを自己の居住の用に供した、(2) 上告人は、同年四月一七日、株式会社日本不動産銀行(現在の株式会社日本債券信用銀行)から、本件土地建物を取得するために、三五〇〇万円を年利率九・二パーセントで借り入れ、昭和五四年八月一六日右借入金の全額を完済したが、右借入金のうち本件土地建物の取得のために使用したのは三〇〇〇万円であり、右三〇〇〇万円に対する借入れ後本件土地建物を自己の居住の用に供した日までの期間(五一日間)に対応する利子の額は三八万五六四三円であった、(3) 上告人は、昭和五三年一月七日本件土地の一部一九八・三五平方メートル(以下「甲土地」という。)を同所三〇番二六として分筆し、また、本件建物のうち甲土地上にある部分二五平方メートルを取り壊して甲土地を更地とした上、同月三一日これを山中政秀外一名に代金四八〇〇万円で譲渡した、(4) 次いで、上告人は、翌五四年八月二二日本件土地のうち、甲土地を除くその余の部分二七四・二七平方メートル(以下「乙土地」という。)及び本件建物のうち乙土地上にある部分一七〇・八一平方メートルを三宝建設株式会社に代金一億〇七八四万八〇〇〇円で譲渡した。

二  そこで、所論にかんがみ、個人の居住の用に供される資産の譲渡による譲渡所得の取得費について検討する。

譲渡所得の金額について、所得税法は、総収入金額から資産の取得費及び譲渡に要した費用を控除するものとし(三三条三項)、右の資産の所得費は、別段の定めがあるものを除き、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額としている(三八条一項)。右にいう「資産の取得に要した金額」の意義について考えると、譲渡所得に対する課税は、資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであるところ(最高裁昭和四一年(行ツ)第一〇二号同四七年一二月二六日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号二〇八三頁、同昭和四七年(行ツ)第四号同五〇年五月二七日第三小法廷判決・民集二九巻五号六四一頁参照)、前記のとおり、同法三三条三項が総収入金額から控除し得るものとして、当該資産の客観的価格を構成すべき金額のみに限定せず、取得費と並んで譲渡に要した費用をも掲げていることに徴すると、右にいう「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額も含まれるが、他方、当該資産の維持管理に要する費用等居住者の日常的な生活費ないし家事費に属するものはこれに含まれないと解するのが相当である。

ところで、個人がその居住の用に供するために不動産を取得するに際しては、代金の全部又は一部の借入れを必要とする場合があり、その場合には借入金の利子の支払が必要となるところ、一般に、右の借入金の利子は、当該不動産の客観的価格を構成する金額に該当せず、また、当該不動産を取得するための付随費用に当たるということもできないのであって、むしろ、個人が他の種々の家事上の必要から資金を借り入れる場合の当該借入金の利子と同様、当該個人の日常的な生活費ないし家事費にすぎないものというべきである。そうすると、右の借入金の利子は、原則として、居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に該当しないものというほかはない。しかしながら、右借入れの後、個人が当該不動産をその居住の用に供するに至るまでにはある程度の期間を要するのが通常であり、したがって、当該個人は右期間中当該不動産を使用することなく利子の支払を余儀なくされるものであることを勘案すれば、右の借入金の利子のうち、居住のため当該不動産の使用を開始するまでの期間に対応するものは、当該不動産をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用ということができ、当該個人の単なる日常的な生活費ないし家事費として譲渡所得の金額の計算のらち外のものとするのは相当でなく、当該不動産を取得するための付随費用に当たるものとして、右にいう「資産の取得に要した金額」に含まれると解するのが相当である。

以上のとおり、右の借入金の利子のうち、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものは、右にいう「資金の取得に要した金額」に含まれ、当該不動産の使用開始の日の後のものはこれに含まれないと解するのが相当である。

三  以上の見地に立って本件をみるのに、前記の事実関係によれば、上告人は、資金三〇〇〇万円を借り入れることにより、自己の居住の用に供するため本件土地建物を買い受けて取得し、昭和四六年六月六日これを自己の居住の用に供したというのであるから、右三〇〇〇万円に対する借入れ後同日までの期間に対応する利子の額である三八万五六四三円は、上告人の昭和五三年分及び同五四年分の各譲渡所得の金額の計算上、同法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に該当するが、昭和四六年六月七日以降のものはこれに該当しないというべきである。原審の判断は、結論においてこれと同旨であるから、是認することができる。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に基づいて原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂上壽夫 貞家克己 園部逸夫 佐藤庄市郎 可部恒雄)

上告理由

原判決には、所得税法第三八条第一項の解釈適用を誤った違法があり、これは判決に影響を及ぼすこと明らかである。この法令の解釈の誤りの結果、上告人は法律に定めのない租税を課されることとなり、原判決は憲法第八四条に違反する。さらに、この法令の解釈の誤りの結果、譲渡所得の計算上、取得した資産を使用した者と使用しない者との間に理由なき差別が生ずることとなり、原判決は憲法第一三条に違反する。

以下に右所得税法の解釈の誤りの内容につき詳述する。

一、本件の争点は、原判決も述べる通り、本件土地等の譲渡所得を計算するについて、これを購入するために借り入れた金員の利子として支払った金員のうち、上告人が右土地等に居住するようになった日である昭和四六年六月六日の翌日から本件土地等を譲渡し借り入れ金を返済した日である昭和五四年八月一六日までの分を、所得税法第三八条第一項の「資金の取得に要した金額」ではないとして控除しなかった被上告人の取扱が、適法であるか否かである。

二、原判決は、右争点について以下のとおり判示した。

1 固定資産の取得にあたり必要とされる資金は、それが手持ちの自己資金であれ、借り入れ資金であれ、所得税法第三八条第一項所定の「資産の取得に要した金額」に当たることは明らかである。……借り入れ金利子も右資金元金と併せ「資産の取得に要した費用」そのものに当たると解すべきであり、右資金借り入れについての必要経費又は当該資産の保有に伴う維持管理費等とはその性質を異にするものといわなければならない。

2 しかしながら、借り入れ資金が、その元本利用の対価として右利用期間中において借り入れ金利子という負担を生ぜしめるのに対応して、借り入れ資金によって取得した固定資産は、その保有期間中右資産の自己使用による対価としていわゆる帰属所得という利益を生む。

3 そして、右資産の自己使用開始可能の日時から資産譲渡による資金元本回収の時点(資金元本の返済可能時)までに支払われた借り入れ金利子は、社会通念上その期間中の帰属利益と等価とみなされるべきである(民法五七五条参照)から、資産譲渡時に回収すべき投下資本額は結局借り入れ金元本額に帰着することになるのであって、借り入れ金利子はそこに包含されないといわざるを得ない(ただし、資金借り入れ時から資産を取得して利用可能になる時点までに支払われた利子は取得費に含まれる。)。

4 右の考えによれば、固定資産の取得によりその引渡しを受け、これを利用し得た時期以後の借り入れ金利子は、本来、当該資産を現実に利用したか否かにかかわりなく、取得費の中に算入されるべきではないこととなるが、本件において、現実に資産の利用を開始した時期以前に利用を開始し得た旨の主張立証がないので、上告人が本件土地等を居住の用に供した日時であることが当事者間に争いのない昭和四六年六月六日を以て利用可能の日時と解すべきものとする。

5 (なお、資産を取得した後、使用可能であっても、現実に使用しないで譲渡した場合には、当該譲渡の日までの利子を取得費に算入するとの解釈があるが、右に判示したところに照して、これを採用することができない。実際問題としても、右の解釈は、土地建物を投機の対象とすることを助長するおそれなしとしない。)

三 上告人としては、原判決の右判示中、1、については同意見であるが、2、3、については、譲渡所得に対する課税の本質を理解しないかあるいは誤解したものであって、所得税法第三八条第一項(以下法三八条一項という)の解釈を誤っていると考える。上告人は、居住を開始した日以降の利息も本件土地等の購入に不可欠であり法三八条一項所定の取得費に当たると考えるものである。

原判決の判示中右5、については、上告人は、以下に述べる通り使用の有無によって取得費への算入を区別すべきものではないと考えるので、判示とは別の理由で、使用しない場合のみ取得費に算入するとの考えは不当と考える。

法三八条一項の解釈にあたっては、イ、取得費とはどのようなものか、ロ、借り入れ金の利息は取得費になり得るか、ハ、当該資産の使用は右イ、ロ、の判断に影響を与えるか、について考慮する必要がある。

1 右イ、について

(1)、譲渡所得に対する課税は、「資産の値上がりによりその所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のもの」(最判昭和四三年一〇月三一日、最判五四年六月二一日)と解されており、帰属増加益が実現したときに一括して清算課税するものである。したがって、法三八条一項所定の取得費は、帰属増加益算定の前提となるものである。ここから、資産の取得のために実質的に必要と認められる出捐が取得費とされることになる。

(2)、ここで注意されるべきことは、「取得」とは、処分権と使用権の一体となった所有権の取得である。使用権の取得は含まないとの解釈はできない。両者を区別して取得していないし、出捐も両者を区別することは不可能である。借り入れ金の利息を、当該資産の利用の対価であり取得の対価ではないとする考えは、「取得」を処分権の取得に限定しようとする考えだが、この考えをとるなら、利息に限らず代金、登記費用、仲介料についても、処分権の対価の部分と利用権の対価の部分に区別する必要があるはずである。しかし、その区別は不可能である。さらに、利用を開始した後の利息が取得に無関係かといえば、その利息を支払わなければ資産を取得できないのであるから、否であることは明白である。

2 右ロについて

(1)、借り入れ金の利息は、資産の取得の為に実質的に欠かせないものである限り法三八条一項所定の取得費たりうる。この点は原判決も認める。

以前は、借り入れ金の利息は取得費には当たらないとする考えが判例の認めるところで、実務上の取扱もこの考えに従っていた。しかし、昭和五四年六月二六日の東京高等裁判所の判決により利息を取得費に含めるべきとの判断が示され、当該事件が資産を使用しないで他に譲渡した例であったため、実務上、使用する以前の利息にかぎり取得費に算入することに変更された。(所得税基本通達三八―八ただし昭和五四年一〇月二六日付け国税庁長官通達直資三―八「所得税基本通達の一部改正について」による改正後のもの。)しかし、右高裁判決は、理由中において、取得費に含められるか否かの判断において資産の利用の有無を考慮することは筋違いと判示しているのであり、実務上の取扱は中途半端に改正されたにすぎない。そして、被上告人は、中途半端な改正を後から正当化するための理屈を展開しているにすぎない。

第一審判決も、原判決も、利息が取得費に当たることを認め、このかぎりでは右高裁判決の考えが広く支持されつつある。実務上の中途半端な取扱を正当化する理由はいまだ示されていない。利息が資産の取得に不可欠であれば、当該資産の利用の有無に拘らず、取得費に算入することを認めるべきである。

(2)、なお、「取得に不可欠か否か」により取得費に含めるか否かを判断する場合に注意すべきことは、ここでいう「取得」とは、観念的、理論的な所有権の取得ではないことである。登記費用や仲介料を支払わなくとも観念的な所有権の取得に支障はない。しかし、これらが法三八条一項所定の取得費に含まれることは争いがなく、取得に必要か否かはより実質的な見地から判断されることである。利息も同じであって、取得の為に欠かせないか否かは形式的にのみ判断してはならない。形式的には取得の為に不可欠とは言えないようにみえても、実質上は取得に欠かせないことは明らかである。

3 以上のイ、ロ、の検討において明らかなように、利息が取得費に当たるか否かは資産の取得に欠かせないか否かによって判断されるのであり、ここでは当該資産の利用の有無は考慮される余地はない。しかし、原判決は、前記二項2、3、のとおり、利用期間中の利子に対応して自己使用による対価としていわゆる帰属所得という利益を生むとし、社会通念上利子はその期間中の帰属利益と等価とみなされるべきものと判示した。判示の趣旨は必ずしも明確でない。上告人としては、利息はその間の資産使用の対価と考えるべきものとの判示と理解する。そして、この点が上告人の最も不服とするところである。以下に述べる通り当該資産の使用、不使用、使用開始時期、並びに使用期間は、右イ、ロ、の結論を修正すべき事情とはならない。

(1) 資産取得の為の借り入れ金の利子が法三八条一項所定の取得費にあたるか否かは、資産の取得の為に欠かせなかったか否かの判断によって決まる。利子の支払い義務を負わなければ資金を借りることができないのが普通であるから、借り入れ金によって資産を取得するときは、一般的には利子は資産の取得に欠かせないと考えられる。この判断の過程では、右使用、不使用等の事情を考慮する余地はない。これは、譲渡所得課税の趣旨が特定資産に関する帰属増加益について担税力を認めたもので、資産の使用収益を考慮に入れたものではないから、当然のことなのである。東京高裁昭和五四年六月二六日判決(昭和五二年(行コ)第五六号)も、「譲渡所得に対する課税の本質は資産の保有期間中の値上がり益に対する清算課税であり、資産使用による収益の有無を考慮に入れる制度ではないから譲渡所得の控除費目としての取得費に当たるか否かを定めるに当たって使用の有無を考慮に入れることは筋違いのことといわなければならない」と判示している。

重ねて述べるが、譲渡所得に対する課税が当該資産の使用による経済的利益に関係する課税制度であれば、資産の使用、不使用を考慮する必要があるが、譲渡所得課税はいわゆる資産の値上がりにより所有者に帰属した利益を課税対象とするもので、ここでは使用に関する利益の有無は全く考慮されない。従って、借り入れ金の利子についても、資産の取得に欠かせないものと認められれば、資産の使用、不使用に拘らず、法三八条一項所定の取得費にあたると考えるのが当然なのである。

(2) 原判決の判示は、資産取得資金の利息を当該資産を使用することの対価と考えているものと推測されるが、仮にそのように考えることが可能だとしても、それを根拠にして、法三八条一項の解釈により取得費と認められるものを除外することは、許されることではない。譲渡所得の取得費に当たると認められるものが同時に他の所得の計算上の控除費目にも当たると認められることは、少なくない。この場合は、双方から控除することは許されないが、いずれから控除することも許されるのである。原判決は、利用期間中の利子が帰属所得という利益の対価としての性格を有し、しかもそれが等価と看做されることを理由として、取得費から除外すべきものとしたが、これは不当である。

以上により、原判決が法三八条一項の解釈を誤ったことは明白とかんがえる。

4 原判決の他の判示についても、結果として法三八条一項の解釈に影響しているので、上告人の考えを述べる。

(1) 「借り入れ金利子は社会通念上帰属利益と等価とみなされる」と判示するが、資産の取得資金のうち借り入れ金と自己資金の割合は一定でなく、借り入れ金の利率も一定ではないので、利子の支払い額は一定しない。同一の資産の取得であっても、その購入資金の借り入れにあたりいくらの利子を支払うことになるか予想することはできない。むしろ一定しないと言える。他方同一資産の帰属利益は一定とかんがえることになると思われる。原判決の言わんとするところは理解できない。引用する民法五七五条は、売買における目的物引渡し前に生じた果実の帰属と代金支払い期限の定めなきときに目的物引渡し以後の利息支払い義務を、特約なきときの基準として公平の見地から定めたもので、判示の正当性を裏付けるものとして妥当とは考えがたい。上告人は、いわゆる住宅ローンではなく短期の借り入れのため高い利息を支払ったので、とても帰属利益(家賃)と等価とはいえない。

(2) 原判決は前記二、5項の通り「投機助成の恐れがある」と判示したが、これは政策論であり法律論ではない。政策的にはこれと全く異なった判断、例えば、金利を取得費と認めることにより住居の住み換えが容易となり我が国の立ち後れた住宅事情が向上し住宅産業も活性化するとの判断も可能である。

四 第一審判決は、使用開始迄の利息のみ取得費に含め、使用開始以後の利息は取得費に含まれないとし、その理由として、使用価値支配の為の利子の支払いは資産の値上がりとは何等関連性を有しないから譲渡所得の計算上費用として控除することはできないとした。

この考え方の不当なことは上告人の昭和六〇年一一月一八日付け準備書面記載のとおりである。

五 資産を借り入れ金によって取得した場合、借り入れ金の元利金を完済したときにはじめて当該資産の所有権を実質的にも取得したと考えるのが、社会的通念である。また、借り入れ金によって資産を取得し値上がりしてから当該資産を処分した場合、譲渡所得から利息以外の取得費を控除するだけではなく、借り入れ金の利息をも控除した残りが自己に帰属した増加益と考えるのが、社会通念と言えるとかんがえる。支払い利息相当額は、増加益として残存していないからである。さらに、増加益に担税力を認めて課税するのに、支払い利息を取得費と認めない場合、実際上は支払い利息相当額については担税力がないという不合理なことになる。

資産の取得に欠かせない支払い利子を譲渡所得の計算上取得費に含めることは、これらの社会通念に合致する結果となるし、担税力における不合理を生じさせないことになる。

上告人の主張は、極めて妥当な結果を生むのである。

六 譲渡所得における現在の課税の実情は、結果的に、資産の取得者のうち非事業用資産の取得者で、かつ、その資産を利用した者だけが、借り入れ金利子の所得控除を受けられないことになっている。この結果は合理的なものとはいえない。借り入れ金の支払い利子は、家事上の経費に似た面があったとしても、資産の取得費としての性格をもつことは否定できない。非事業用資産の利用者だからといって、譲渡所得税を他より多額に課税されることは、法の下の平等に反し憲法第一四条に違背する。

以上

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